RIFF house/コンクリート埋込照明器具モックアップ_5mmの世界

今回は照明のお話しです。コンクリート造、鉄骨造、木造でも同じことが言えますが、器具自体のデザインがいくら良くても仕上げ部分と器具が取付く部分のディテールが悪くては空間全体が台無しになります。プランニングや断面計画と同様に、空間デザインにおいて照明計画や設備計画は非常に大切なエレメントです。

RIFF Houseは内部空間の仕上げはコンクリート打放し仕上げになります。照明器具を壁面に設置するブラケットライトの場合、既製品の照明では器具自体が露出してしまう納まりになります。せっかくの打放し仕上げなのに照明器具に目がいってしまいますよね。シャンデリアのようなペンダント照明はそれ自体が空間デザインの一部なので良いのですが、ダウンライトやブラケットライトのようなベース照明はできるだけ存在感を消すようなデザインをしています。照明がついていない時にこそ存在感が消えるように。。星のような等間隔配置のダウンライトはNGです。

上記のスケッチはコンクリートを箱抜き(コンクリート打設時に埋込処理すること)にして、器具自体を埋込むディテールを検討しました。壁から電球のみが生えているようなデザインです。機械部分をプレートやカバーで隠すのではなく機械部分を半埋込して照明器具の存在感を消すようなディテールです。使用する電球はクリアのボール球なので点灯していない時はガラス玉が壁に張り付いているような、ある意味アートな印象です。

色々と設計者同士で検討している中、お施主様である設備家の奥様が、なんと!!原寸大の模型を製作してくださいました!スケッチで描いた寸法通りに木材を加工してどのようにランプが見えるか、機械部分の器具がどのように見えるかなど、とても分かりやすいですね。

こちらは横から見た照明器具の断面写真です。ランプが取付く機械部分は陶器製の器具を採用しています。レセップと言います。写真をみるとレセップの横から配線が出ているのがわかりますが、コンクリートの箱抜き寸法をかなり大きくしないと、器具を設置する際に結線処理が難しいことがわかりました。このように原寸大の模型で確認すると物理的に施工可能かと、美しい照明器具になるかが本当にわかります。

場所を変えて栄港建設さんにて点灯実験です。ここで照明の高さも確認していきます。床から約2mくらいに設置します。ブラケットライトは階段や吹抜け部分にも設置するので、目線を避けかつメンテナンスがしやすい高さに設置します。

事前に電気・機械設備会社のミドリ電工さんに埋込照明のスケッチをお送りしていました。そこで提案して頂いた器具が上記の写真です。黒いボックスは一般的にスイッチやコンセントなどをコンクリートに埋込む為のボックスですが、それを応用して照明用のボックスを開発されたようです。この辺りは著作権がありますので説明は割愛します。

皆さんが覗き込んでいるのは横から見た時にランプがどう見えるかを確認しています。コンクリートの埋込寸法の確認です、ここでも紙を用いて原寸で確認します。埋込寸法は35mmか40mmです。mm単位で調整し一番ランプが美しく見えるように検討しました。

上記の写真は40mm埋込の場合。悪くないですね。ガラス玉が壁に浮いているような印象です。

こちらは35mm埋込バージョン。ランプのくびれが少し見えた方が美しく、より浮遊感が出ていますね。これが5mmの世界です。1時間程議論を重ね満場一致で35mmで確定しました。

リビングに設置するペンダント照明の設置位置検討。断面模型で照明器具をコラージュしてみました。照明はジャスパーモリソンデザインのフロスのグローボールです。ベストセラーですね。上記写真はコンクリート天井の中心に設置したコラージュ写真。図面だけを見ているとコンクリート天井の中心に設置しようと考えておりましたが、こうして模型を見ると空間に対して右側に少し詰まった感がありますね。

こちらは空間の中心に設置した場合。こちらの方がゆったりとしている印象です。ほんの30cm程度の差なのですが劇的に変わりますね。設計中はどうしても面の中心で配置しがちですが、少しずらすことでヒエラルキー(境界)が曖昧になります。RIFF Houseの空間構成は、個室ではなく空間全体が繋がるので、あえて【ずらす】デザインは効果的です。